かえってリアル
沢木耕太郎が「読み物としてのノンフィクションというより、学術的な研究書といった色彩を色濃く持っている」と、その翻訳にあたった苦労を書いているが、読み終わってみると、私的感情が入っていない分、戦争写真家の悲劇がリアルに伝わってくる本だった。恋愛はいつも尻切れトンボ、家庭を持ちたいという願望へも踏み切れず、仕事へも悩み、地雷を踏んで、あっけなく死んでしまったことが、幸せだったのか、不幸だったのか、その膨大な資料をもとに、淡々と書かれた本を前にして、それぞれの読者が、それぞれなことを思う、その判断にすべてをまかせるのが、もしかしたら、著者の狙いなのかもしれない。
天才の周りには天才が・・・
伝記を読むと、その人の偉大さや才能に刺激を受け頑張ろう、と思ったりしてしまいます。とても及ばないとは知りつつも・・・。本3部作は、キャパの魅力や勇敢さや才能に刺激をうけるのはもちろん 本書を通して登場する、キャパの周りの非常に魅力的な人々にも とても惹きつけられます。 才能の周りにはやはり才能あふれる人たちが集まるのか、 キャパの周りには本当に面白い人が多い。 そんな人たちのことも生き生きと描かれています。 そういう人たちに囲まれて、キャパは支えられ、そして現代にまで 「最も有名な戦争写真家」として名を残すに至ったんだなということが 理解できました。 個人的にはキャパの最も愛した女性、ゲルダ・タローが印象的でした。 彼女の勇敢さ、独立心、才能、美貌もキャパを通して描かれています。 戦時をたくましく、楽しく、かっこよく生きた人達を知るには 素晴らしいシリーズ。刺激的でした。
文藝春秋
キャパ その青春 (文春文庫) ちょっとピンぼけ 泥まみれの死―沢田教一ベトナム写真集 (講談社文庫) 戦争・平和・子どもたち―ロバート・キャパ写真集 (宝島社文庫) 地雷を踏んだらサヨウナラ (講談社文庫)
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